CRIMINAL

ルイン/著



まだあのときの感触が手に残っている。
いくら忘れようと思っても、『あの瞬間』が頭からはなれない。
俺は―――どうしてしまったのだろう。


―――ありがとうございました。貴方様が助けてくれなかったら、わたしは・・・・・
「いえ・・・無事でなによりです。」

―――すごいな。お前、名のある剣士さんだろ?
「・・・そうでも、ありませんよ。」

―――これで悪者がいなくなったんだね!お母さんを助けてくれてありがとー!
「・・・・・・ああ・・・」

―――いやはや、本当に助かりましたぞ。剣士様、ありがとうございます。
「・・・・・・・・・・・」


人を助けたい。そのために、俺は剣士になった。
大切なものを守るために。誰かに辛い思いをさせないために。
誰かを殺すために強くなったんじゃないのに・・・・・・。


ある村に、盗賊が現れた。
一人の婦人を人質にとって―――。
その場に、たまたま俺がいたというだけ。
ほんの、偶然にすぎなかったのに。
夢中、だった。このままでは、この人が殺されてしまうかもしれない。
助けたかった。ただ、それだけだった。

気がついたら俺は、その盗賊にむかって駆け出していた。
そして、俺は、そいつに、剣を―――


俺に、何か温かいものがふりかかってきた。
血、だった。剣にまとわりつくかようについている、赤い鮮血。
ぬるりとしたその感触に、殺してしまったという実感がわきはじめる。

皆が感謝した。皆が褒めた。
俺は―――人を、殺したのに。
人の命を奪ったのに。
魔物を狩ってきた俺にとって、命を奪ったのははじめてのことではない。
なのに―――なんで、今回に限って、こんなに・・・・・。
同族だから?知性があるから?
俺には、わからない。同じ、命なのに。
どうして――――。

俺は、誰かを助けるために、誰かを犠牲にしてしまった。
何かを得るために、何かを捨てる。
―――こんなことをするために、力が欲しかったわけじゃないのに―――。



それは、俺がはじめて人を殺してしまった時のこと。
俺が、人の為に剣を使った、決して忘れる事のできない日。
人の命を助けるために、誰かを殺し、そして俺自身に『あの瞬間』を刻み付けた。
―――決して忘れる事のできない、罪を。


                  『CRIMINAL』〜完〜


ルインさんのコメント
これを書いた時間、わずか10分(どーーーん)
なんとなく、書いてたらこうなった。
人を思うあまり、暴走するランス君です(してないって
一応、彼もこういうのを背負えばかっこよくなr(ならないって
えー、ダークもの万歳です。