幸せというもの
ルイン/著
最初のコメント |
まず、宿にいるみたいです。 そこで、セイル君がなにか殺されかけることをしてしまったようです。 セイル、この小説ではとてもマヌケですが、本当はかっこいい人です。一応腕のいい剣士だし。 そして、レミアさん。本当は、もっと優しいはずです。水魔法使い。 ギャグなので、とてもとても性格狂ってますが、本当は皆さんもっとまともな人です。 |
苦しい・・・・・・・・ 体が、痛い。 意識が、朦朧としてくる。 もう、だめだ。 もう―――― 「この、馬鹿者が。」 腹に一撃。 「なにをしたかわかってる?」 足に一撃。 「あなたの存在が、どれだけ私の負担になっていると思っているの。」 (首を絞めるなぁぁぁぁ!!) 俺の心の叫びは虚しく消える。 「・・・・レミア・・・・・それ以上やると、死ぬぞ、きっと。」 背後から聞こえたその声に俺は救われた。 「そうね。たしかに、死なれちゃ後処理が大変かもしれないわ。」 「ぐっ・・・・・」 やっと開放される。 いや、マジで殺されるところだった。 彼女――ルナが声をかけてくれなかったら。 「ルナ・・・・さんきゅう・・・・・・」 「そのいまにも死にそうなミミズの声で話し掛けないでくれ。」 ルナの心配のまっったくこもってない声に、俺――セイルは確信する。 「いい?今度やったら――何されても文句言わない事ね。」 レミア。俺の、まあ相棒的存在。 ・・・・・・・・・俺の確信は、揺るぎないものへと変わる。 鬼だ・・・女は鬼だ―――ッ!! 少なくとも、俺が今まで見てきた女は鬼に近い。近すぎる。 レミアといい、このルナという女といい・・・ そして、俺と同じ境遇にいるヤツがいる。 「大丈夫か・・・?セイル・・・・・」 あくまで自分の身のためか、控えめに声をかけてきた。 コイツは、ランス。・・・結構女の尻に敷かれてる(本人は否定しているがそう見える)、俺の仲間だ。 「こういうのには、きっちり常識と言うものを覚えてもらうわ。―――覚悟はいいわね。」 レミアはそう言って、それはそれはとても優しく微笑んだ。 しかし俺の背筋には、なにかやばいものが走った。 地雷を踏んだ時のような、なにか取り返しのつかないことをしたような気分だ。 だいいち、もう俺に選択権はないようだった。 「覚悟はいいわね」と言いつつ、疑問系ではない。 いやそれどころか、何故常識を覚えるのに覚悟が必要なのだろうか。 「いや・・・いやいやいや!俺はお前らと違っていつでも常識にんげ、んッ!?」 げし、という音がしたような気がする。 レミアに足を踏まれた。 しかしレミアは何事もないように、 「・・・どうしたのかしら」 もはや「?」がないほど抑揚なし。 (何でそんなに怒っているんだ!?さっきっから弁解してるじゃねぇか!) 俺は何もわからない。 いや寧ろ理解しろというほうが難しい。 そう――女の思考など理解できるものか! 何故俺がこいつ等にこんな扱いを受けなけれればいけない!? いやそもそもヤツ等の存在自体ありえない! だいだいなんだ!?この冷酷さは!? 血が通っているのかこの女共は・・・? 通っていても絶対に緑に違いない! はっはっは!そうだともそうだとも! さすが人外二人組み!! 我ながらナイスな考え 「だっ!?」 背後からなにか衝撃をうけた。 ルナ、だった。 「―――人外で悪かったな・・・?」 ・・・・ 「冷酷で悪かったわね。」 ・・・・・・・・・ (心の声を聞くのはやめてくれっ!!) 「あなた顔に全部でるもの。恨むなら自分の顔を恨みなさい。」 「レミア・・・・なんで俺が、自分の顔を恨まなければいけない・・・・? だいたい、なんで俺が」 「俺、少し席外していいか?」 俺の声を遮り、いまにもその場から出そう―――いや、脱出しそうなランス。 「おっ、まえ・・・俺を見捨てるのか!?俺にこいつらに殺されろと!? 見損なったぞランス!!お前は心の友を捨てていくというのかあぁぁぁぁぁぁ!?」 人差し指までつけて大げさに言う俺。 いや、ここで逃げられたら本当にやばい。 袋叩き確定だ。 一瞬、ほんの一瞬だけ、ランスの顔に罪悪感のようなものが浮かんだ。 しかしそれは一瞬の事。 ランスは、ひらひらと手を振り、 「いや、お前と心の友になった覚えもないし、捨てもしない。大丈夫だ。あとで拾いにくる。」 ―――屍を、と言外で言っているような気がする。 てか、真面目にそんなこと言わないでくれぇぇぇ! くぉの裏切り者ぉぉぉぉぉッ!! 「・・・ごめんな。」 その一言だけを残して―― 彼は、この地獄から脱出した。 三人だけになり、そして命の危険を感じる俺。 「ま、待て。話を聞いてくれないか。」 「遺言か。早く簡潔に解りやすく言え。」 今にも殴りだしそうなルナ。 「ここで俺は無実だなんて言ったら・・・どうなるか・・・わかるかしら?」 今にも蹴りだしそうなレミア。 ていうか、これってリンチっていうやつじゃないかっ!? 「いや、結論で言えば無実だ。まずそのいきさつからちゃんと聞いて欲しいんだが・・・・でっ!?」 バシン、と首に衝撃。 ルナの『神速切断手のひらソード』(俺がいま命名)が俺の首に炸裂した。 さ、さすがはルナだ・・・ 人間の弱点をよくとらえてる・・・・・・・・ そのぶん、かなり痛ぇ!! こ、殺す気か・・・容赦なかったぞ!? 「死人に口なし。」 意味の分からない言葉をさらっと言うと、ルナはバトンタッチと言わんばかりに身を引いた。 (てか、死人・・・ッ!?) 自分の顔が青くなっていくのがわかる。 な、なんか異様な寒気が・・・・・ 「セイル。あなたは、どうしていつもそう馬鹿ばっかりするのかしら・・・?」 一見、心配して相手のことを思っていったような台詞。 しかし、その顔は―――笑っていた。冷笑・・・だ。 台詞とマッチングしないその表情は、もはや人外だと思う。 何故こんな顔ができるのかー・・・ 「セイル。一回、死になさい。窒息死でいいかしら?」 水系魔術スタンバイオーケーのレミア。 「いや、生憎と水は好きじゃなくてな・・・冷たいしな・・・?」 「じゃああなたの体内の水分を全部抜こうかしら。」 そんなことできるはずがない。 だが――― 頼むから、その笑い、やめてくれぇぇぇ!! 「・・・あ、そうだ。俺、ちょっと用事が・・・・・・」 レミアが笑いながら、 「あらそう。すぐに終わるから大丈夫よ。」 俺のありがちな口実はあっけなく消される。 ・・・怖ぇぇ!! 「ちょ、ちょっと待て、待て、な?少しでいいから、待ってくれ。」 「弁解の余地はないわ。」 「今更何を言うんだ。失望したぞ、セイル。」 レミアとルナの言葉に、俺はツッコミをいれる――心の中で。 ―弁解の余地アリ! ――今更って、はなっから何も聞いてくれないじゃないか!! 「弁解の余地なし。責任とりなさいね、セイル。」 俺の悲鳴が、宿全体に響いた。 ずぶ濡れの服を着替え、自室に戻り、髪をふく。 そして、またも心の中で愚痴言いまくり。 「ったく・・・風邪でもひいたらどーするんだよ・・・・」 レミアに、水を浴びせられた。 ものすごく冷たかったし、その後にルナが凍らせようかとか言ってきたもんだから、命が危ない。 ていうか、俺はなにも悪くない。 心の中だけ、そう呟く。 そう、偶然だったのだ。 たまたま、である。 俺はそんな気じゃなかった。 ましてや、風呂を「のぞく」などという、馬鹿じみた行為をするつもりなど、毛頭なかった。 では、どうしてそういうことになったのか、というと、実はよく思い出せないでいる。 ルナに氷の塊で殴られたから、記憶喪失になったのかもしれない。 レミアに首を絞められたから、酸欠で脳が少しいかれたのかもしれない。 ―――なんか物凄く自分が可哀相に思えてきた。 女共に殺されかける剣士がいるか? ―――マヌケだ。 たくさんの魔物を斬り、そして滅ぼしてきた者が、・・・・・・・・・・・・ ―――――――これ以上考えるのをやめよう。 これ以上、自分の不幸に気づいてはいけない。そんな気がした。 そうとも、自分は幸せなのだ。 いくら自分を殺しかけるとしても、それでも自分の身を心配してくれる仲間なのだ。 そう、そんな仲間がいる自分は、なによりも幸せなのだ。 ――――――そうでも思わないことには、やっていけないだろう。 ずぶ濡れの髪を拭きながら、俺は大きく息を吐いた。 |
ルインさんのコメント |
息抜きに描いていたら、少々長くなっちった(マテ そして、意味不明。ごめん、セイル。 大丈夫、君の仲間は皆優しいさー。 セイルの暴走癖は、お約束。 頭が良いのか悪いのか。思考が余計なことまでまわりすぎるようです。 レミアさん、とてもクールです。冷笑が大得意。 ランス君、後でちゃんと拾いにきてくれたはずです。 ルナさん、氷の微笑み大得意。レミアとご一緒にどうぞ。 セイル君、ご愁傷様です。外伝でカッコイイところを見せてください。 |